風シアとはどんなもの    〜その1〜
  気象学では、風シアを「鉛直方向または水平方向(定圧面上など)に単位距離だけ離れた二点間の風ベクトルの差」と決めている。ここでの単位距離として航空気象の実務面では、鉛直方向には高度差 1千フィート( 300メートル)、水平方向には流れに直角に測って60カイリ(緯度 1度に相当)の距離をとって計算している。(WS-5図)
  2001年現在、航空では世界の大半の国で、飛行高度を表すときの距離単位はフィート(厳密にはジオポテンシャルフィート)、また水平方向の距離単位はカイリ( 1カイリは1852メートル)を使っている。いずれも永年の慣例として続いているが、一部の地域ではメートル法が採用されている。
  実際に風シアの値を求めるには、適宜の二点で得られた実測または予測の風のベクトル差をとっている。得られたベクトル差から、風向と同じように表した方向と単位距離当たりの風速差として表現する。簡便に風速差だけを使っている場合もある。
  ところで前の節では、航空機を包み込んだ空気の塊が地表面に対して動いたことを、その航空機にかかわる風だといった。航空機、とりわけ飛行機はいつまでも同じ空気の塊に包まれている訳ではなく、次々に動きの違う別の空気の塊に乗り移って行く。いわばその度に違う風に出会うことになる。つまりこれが航空機の移動する間に任意の二点間で受けた風の差で、それを風シアに出会ったと捉える。そしていま呼び方を決めたばかりの、機体の移動方向に相対的な成分の増減として表現している。通常、進行方向に平行な成分の追い風・向かい風シア、それに直角で航空機を左または右の横方向へ流す横風シア、として考える。そして、上下方向には上昇流・下降流である。
  それぞれの風シアに出会ったとき航空機がどのように動くかは、航空機によっていろいろと異なると思うので、ここからは飛行機に限定して話を進めていくことにする。その上で、あらかじめ「風シア」の分け方についての約束ごとを決めておこう。
(C)2002 KATOW-Kimio

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